教材使用のヒント

この教材で勉強したり教えたりするときのヒントです。作成者および本プロジェクトメンバーが授業使用や教材作成・修正のプロセスで気づいたことです。ヒントの最初に、対象とする日本語レベルを書いているものもあります。例)初中級、中級前半、中級後半、上級

 

 


1.文体

l  例文の固有名詞や練習問題の語彙を学習者に合わせて作り変えることをお勧めします。(加藤)

l  学習者自身が文体をコントロールすることの重要性を伝えるために、初回授業で触れるようにしています。(加藤)

l  初中級:文体の違いについて、文末の「です・ます」「だ」「である」だけの説明になりがちですが、文章全体の文体を意識することが大切です。フォーマル/カジュアル、やわらかい/かたい、の四分割表とともに話し言葉と書き言葉の例文があってわかりやすいです。(木戸)

l  初中級:中級前半レベルだと説明や例文の日本語にちょっと語彙が難しい場合があります。説明は学習者にわかることばで言い換え、例文は少しゆっくり教師が音読したら理解しやすくなります。(木戸)

l  中級前半:敬体と常体の使い分けは、動詞よりも副詞が難しいので、練習問題2(スライド1819)が有効です。「フォーマルでやわらかい文体とは?」という質問に対しては、スライド15を提示して理解を促すことができました。(君村)

 

2.引用

l  学習者へのアドバイスとして、次の場合に参考にして下さい。情報源(出典)の書き方、直接話法(直接引用)と間接話法(間接引用)、「書き手(自分)の意見」の書き方と「著者(他人)の意見」の書き方を学習する際に参考になります。(小池)

l  中級前半:文体の違いを意識することが大事だったので、練習問題は必要ありませんでした。練習問題や例文は中級前半の学習者の語彙力では理解が難しいようだったので、説明と例文を音読しながら必要なところだけを取り出して説明しました。(木戸) 

l  中級前半・後半:レベルが上がっても文法的な誤用が目につく項目です。改めて文型を確認することができます。(加藤)

l  中級後半・上級:誤用について、スライド5にある文型のの誤用が非常に多いので、「~によって」と「~によると」の使い分けを丁寧に説明するといいです。(君村)        

l  上級:「引用」の最後の部分を使ったときは、練習問題があってよかったです。説明とともに練習問題をすることによって理解が深まりました。(木戸)

                                                                     

3.接続詞・接続助詞

l  中級前半:誤用について、列挙の接続詞で時々見られる誤りは、「第一」「最後」のように助詞「に」が抜けることです。項目が二つしかないとき(スライド33)や「第一は」で始まる場合の文末の形「~ことだ」に困難がみられます。(君村)

l  上級:「接続表現」の順接は使い分けが難しいようです。説明とともに練習問題も授業でいっしょにすると、学習者には理解しやすくなりました。(木戸)

l  上級:順接の接続詞や列挙の接続詞は、読解では何となく理解できているようでも作文では使い分けができておらず、文体差や種類の異なるものを適当に混ぜて使いがちです。例文を学習者と一緒に読みながら、それぞれの接続詞の使い分けを考えてみると、学習者は作文でも意識して使うようになりました。(木戸)

 

4.疑問文

l  中級前半:問題提起の疑問文(スライド15)では、「の」が抜ける誤りが多いです。また、中級前半では、「~のでしょうか」の普通体を知らない場合も少なくないため、スライド18を提示すると有効です。文の中の疑問文では「の」や「か」が抜ける誤りが多いので、スライド7などを見せながら、解説するのが有効です。(君村)

l  上級:誤用について、「なぜ~のについて」ではなく「なぜ~のかについて」が正しい答えなのはなぜかという質問が出たので、疑問文の文の中の疑問文のスライドを見せながら説明しました。上級の学習者でも「か」を使わず、名詞化「の」「こと」を使う誤用が多く見られます。(木戸)

 

5.文末表現

l  上級:誤用について、上級レベルでは「~つもりだ」「~だろう」「~わけだ」等で誤用が見られます。スライドで誤用の原因を提示し、書き手の本来の意図を確認しながら、適切な文末表現を見つけていきます。(君村)

l  上級:上級レベルでも「のだ」の文の使い方が適切でない場合があります。どんな時に「のだ」を使うのか使わないのか、適切な使い方を学習することができます。(君村)

 

6.「る・た・ている」(テンス・アスペクト)

l  中級後半・上級:研究計画書の書き方を学習する時間に「場面に応じた使用例」を紹介しました。学習者がそれぞれの専門分野に合わせて参考にできると思います。(加藤) 

l  上級:学習者は伝聞や引用で「述べている」より「述べた」を使いがちです。「ている」の用法のスライドでは単純な過去ではない「ている」の使い方を復習できました。(木戸)